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大麻が日本で違法な理由はなぜ?

9月9日に「俳優の伊勢谷友介容疑者」が、大麻取締法違反の疑いで現行犯逮捕されたのは、皆さんの記憶にも新しいでしょう。
【大麻とは】
アサ科の植物で大麻草のこと。
- 大麻草の葉や花穂等を乾燥、樹脂化し吸引する。
- それにより、大麻成分のTHCが脳内のカンナビノイド受容体に結び付き症状を与える麻薬。
大麻は日本では覚せい剤などと同様に違法とされています。
なぜ大麻は日本で違反なのでしょう。
【理由】
パッと思いつくのは次のようなことではないでしょうか。
- 法律違反だから。
- 心身に悪いから。
- 薬物乱用で他の事件を起こし、社会に迷惑をかけるから。
- 暴力団の資金源になるから。
それでは、大麻が日本で違反な理由がなぜなのか、上記の理由など様々な角度から検証してみましょう。
大麻が日本で違法な理由―法律に違反しているから―

大麻を含め、日本の法律に薬物犯罪を取締る法律があります。
その法律の内容を簡単に見てみましょう。
日本で大麻が違法な理由となる法律とは
日本には、薬物犯罪を取り締まるために、以下の法律があるのです。
【薬物四法】
- 麻薬及び向精神薬取締法
➡ヘロイン・コカイン・LSD・クスタシー(MDMA)向精神薬などが対象。
- 大麻取締法➡大麻・大麻樹脂(ハシッシュ)が対象。
- あへん法➡あへんなどが対象。
- 覚せい剤取締法➡覚醒剤などが対象。
【関連法律】
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律
➡「麻薬及び向精神薬の不正取引防止に関する国際連合条約」に対応
上記「薬物四法」と「関連法律」を合わせて「薬物五法」といいます。
これが日本における、薬物犯罪を取り締まるための主な法律です。
日本で大麻が違法になるのは、薬物四法の中の「大麻取締法」が根拠になる法律ですね。
大麻取締法とはどんな内容の法律?
日本で大麻が違法となる根拠である「大麻取締法」では、下記のような内容を定めています。
- 無資格者による「大麻」の取扱いを禁じる法律。
- 大麻とは、大麻草のこと(マリファナ・ハッパという別称あり)。
- 禁止行為は「輸出入、栽培、譲渡、譲受、所持」。
- この法律では「使用罪」は規定されていません。
- 刑罰は、非営利と営利目的で異なりますが、まとめると以下の規定です。
- 懲役刑:5年以下~10年以下。
- 罰金:200万円~300万円以下の罰金が懲役に加えて課される。
大麻取締法の特徴
大麻取締法で特徴的なのは「使用罪」が含まれないという点。
もっとも所持しなければ使用できないので、所持罪で罰せられることにはなるでしょう。
【こんなケースは?】
ケース1:隣の人が大麻を吸っていて、その煙を吸い込んだだけ、という場合には、この法律の対象にはならない可能性があり得ます。
ケース2:他人名義の車を運転中、警察に車を止められたとします。
車中に大麻吸引器具があり、尿検査陽性のため使用は判明しても、肝心な大麻の所持が立証できなければ、不起訴になる可能性もあるのです。
実際、大麻取締法の起訴率は他の薬物犯罪と比較すると起訴率が低く、起訴されたとしても懲役年数が短いため、敢えて大麻を選ぶ人もいるとの憶測も飛び交っています。
それでも大麻検挙人数は増加傾向にあり、2019年には4000人を超えたとのことです。
大麻が日本で違法な理由―心身に悪いから―
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少なくとも、上記の薬物五法の対象となる薬物は、一般的に心身に悪いと言われています。
では、大麻を吸引すると「どのような状態」になるのでしょうか?
大麻が日本で違法とされているくらいなので、悪い症状があるのは予想できますね。
それでも大麻を吸う人がいるということは、良い面もあるのでしょうか?
更に、最近医療の現場で議論が熱くなっている「医療大麻」についても考えてみたいと思います。
大麻を吸引した時の状態

大麻を吸っていても、いわゆる「ハイ」になるのは短時間のため、見極めは難しいといわれています。
それでも、大麻を吸っている人には、いくつかの症状・特徴があるそうです。
どのような症状があるのでしょうか。
大麻を吸引して悪い状態になる場合
【肉体面】神経細胞作用・脳への作用・睡眠障害・食欲増進
- 目が充血で赤くなり、虚ろになる。
- 二日酔いに似たような気持ち悪そうにする。
- 記憶が悪くなり、同じことを何度も繰り返し話す。
- 一度寝ると長時間起きなくなる。
- 独特な甘い匂い(ほうじ茶を炒ったような匂い)がする
- 口が乾くため、頻繁に水を飲む。
- マンチーといわれる大麻によって食欲増進により、大量にご飯を食べる。
【精神面】向精神作用
- テンションがハイになり急に大笑いするなど急激な変化を起こす。
- 目線が合わなかったり、違う方向を向いて話したりする。
- 被害妄想が強くなる(誰かが自分を狙ってる、襲ってくるなど)。
- 大麻への依存が生じる。
- 倦怠感などで怠惰になり怠ける。
- 離脱感覚を味わう(大麻をやめてイライラしたりする)。
- 大麻を吸う時の精神状態により、バッドトリップになる。
全ての症状が出るわけではないようです。
普通の人でも思い当たる点があるような特徴なので、必ずしも大麻のせいだとは言えない面もあります。
ただ、このような症状があるということを知っておくと、周囲の人の異変に早く気が付くことが出来るかもしれません。
大麻を吸引した時の良い状態

大麻を吸う人ことによる影響は、悪い面だけなのでしょうか。
後述しますが、合法化している国もありますので、良い面もありそうです。
【具体例】
大麻によって得られる良い影響をみていきましょう。
- 感性が研ぎ澄まされ、音楽や動画が通常よりも立体的に感じる。
- リラックス効果で、ストレス・うつ気分・イライラが解消。
- グッドトリップで幸福感やモチベーションアップ。
- 免疫力がアップするのか、風邪をひかなくなった、便秘解消など体調が良くなる。
- 単純作業がはかどる。
- 自分に正直になり、深層心理がわかり、新しい視点がもてて、自分を理解できる。
大麻を吸った全ての人にこのような効果があるのかは不明ですが、大麻を吸うとこのような良い影響が受けられたという声がありました。
「医療大麻」について

心身に悪いことが、大麻は日本で違法とされる理由とすると、矛盾することがあります。
それは「医療大麻」の存在です。
外国では大麻の成分を使った「医療大麻」というものが使われている国があります。
近年日本でも、この「医療大麻」についての議論が盛んになりつつあります。
日本で大麻が違法とされる理由を考える重要な視点の一つになるでしょう。
「医療大麻」について最初に
3700人以上のがんの患者さんを診療し、2000人以上の症状緩和に医療用麻薬を処方したこられた緩和ケア大津修一医師が、「医療大麻」についての考察を書かれておられます。
「医療大麻」を日本でも取り入れるかどうかは、簡単に決められる問題ではなく、多くの議論と実証結果、そして日本の現状を含めて広い視野で考えなくてはならない、非常に繊細な問題だと思います。
そのため、この記事を読まれた方一人一人が「医療大麻」について考えるきっかけになればと思い、ご紹介させて頂きます。
「医療大麻」とは
大麻は色々な成分で構成されていて、その成分ごとに研究されているのです。
【大麻の成分例】
- テトラヒドロカンナビノール(THC)
- カンナビジオール (CBD)
【アメリカ食品医薬品局が承認している「医療大麻」】(2019年6月時点)
- 大麻由来の医薬品1種類。
- 大麻関連の医薬品3種類。
現在の「医療大麻」のおかれている状況
【現時点で「医療大麻」について分かること】
- 実際に効果を示すことが検証されている薬剤が出て来ている。
- 大麻由来の成分に、そのような物質があることがわかって来た。
【「医療大麻」は研究途上】
イギリスのプロジェクトが元になり、「医療大麻」について科学的検証を重ね、医学の諸問題をまとめているサイトがあるそうです。
「医療大麻」についての論文が多数あり、一つの薬について効果が正反対の結果であるものも沢山あるとのことです。
つまり、より質の高い論文の結果を集めて検討する必要があり、上記サイトにはその検証を経たものが集め公開されているのだそうです。
「医療大麻」についての検索結果
大津医師が「医療大麻」について検索した結果だけでも数多くあります。
こちらを見て分かるように、まだ確たる証拠に基づいているものは少ないと思われます。
日本において「医療大麻」は必要なのでしょうか?

大津医師は「医療大麻」の今後について、このように述べています。
「大麻由来の医療薬は、科学的検証を経て効果が証明されたものは、今後日本に登場する可能性がある」
その反面、以下のことを懸念されています。
「一部医療大麻推進者が、現在使用中の医療用麻薬を過度におとしめ、医療大麻を持ち上げる傾向がある」
参考:yahooニュース「医療大麻は本当に効くのか? 緩和ケア医が解説。」より。
https://news.yahoo.co.jp/byline/otsushuichi/20190620-00129697/
緩和ケアの手段も充実してきている今、医療薬だけが有効な手段ではないそうです。
ただ、緩和ケアと有効な医療薬が患者の痛みを少しでも軽減できればそれはとても喜ばしいことです。
今後、この分野については、慎重に国民一人一人が議論を重ね、科学的検証を経て導入しなくてはならない、ということだけは言えることだと思います。
大麻にはこのような側面があることも、日本で大麻が違法である理由を考える上で忘れてはならない視点だと注目していきたいものです。
大麻が日本で違法な理由―薬物乱用で他の事件を起こし社会に迷惑をかける―

大麻が引き起こす症状の中には、いくつかそれが原因で社会的問題になり得るものがありました。
【交通事故】
脳神経に影響を与えるということは、判断能力の欠如となり、車の運転など日常的な動作の中でも判断を誤ったために人命にかかわる問題を引き起こすでしょう。
【傷害殺人事件】
また、強迫観念が強くなり、自分が狙われている、襲われそうだという意識にとらわれたがために、側にいた人に危害を加えた事例を私は実際に見聞きしたことがあります。
【覚せい剤への入り口】
大麻がきっかけとなり、更に依存性が高く、人を廃人にする「覚せい剤」に手を出すようになる危険性もはらんでいます。
大麻自体が、「煙草やお酒よりも害が少なく依存性も低い」という主張をする人も多いですが、だからといって上記に書いたような危険性が払しょくされる訳ではありません。
この点からは、個人的意見としては、大麻を日本で違法にする理由はある、と考えます。
大麻が日本で違法な理由― 暴力団の資金源になる―

大麻が日本で違法な理由の一つとして、暴力団など反社会的勢力の資金源になる、という点が挙げられますが、現実はどうなのでしょうか。
最近の大麻は「品種改良品」?
【大麻の改良品】
最近の大麻は、幻覚症状・脅迫概念や依存性を高めるTHC成分をより多く含んだ、いわゆる「品種改良」が売買されているようです。
【混ぜ物大麻】
それでも、売人は単に大麻を売っても儲けが少ないので、覚醒剤などの混ぜ物をいれて依存性を高めて売るとのこと。
【質の悪い大麻】
つまり現在日本で売買されている大麻は質が悪いということ。
売人が売る出処不明な大麻は、混ぜ物入りで精神に悪影響を及ぼしてしまうので、純粋な大麻よりもたちが悪いということです。
【覚せい剤への道】
売人は、混ぜ物入りの大麻ということで高い単価で売ることができるようになり、使用者は依存性が高まり、そして覚せい剤への道が近づき、破滅するまで骨の髄まで吸い尽くされる、という構造なのでしょう。
覚せい剤への依存性は大麻とは比べ物になりませんし、値段も高額です。
それでも依存した人は覚せい剤を手に入れるために、犯罪を手段としても資金調達し覚せい剤を手に入れようとします。
つまり、大麻も十分暴力団の資金源になっていると言えるでしょう。
大麻とコロナの関係
夜回り先生という愛称で、夜の街を帰る場所もなく悪の道に入る若者を救うために活動している水谷修先生が、コロナになってからの若者と大麻などの薬物の関係を憂慮しています。
というのも、コロナによって暴力団の資金源に変化が現れたためだそうです。
【元々の資金源】
元々暴力団は、総会屋、地上げ、風俗店や飲食店への民事介入暴力、闇賭博を資金源としていたのが「暴力団対策法」等の法規制により、その手段を失ったのです。
【法改正後の資金源】
そのため現在では、「オレオレ詐欺」等の高齢者をターゲットとした詐欺、売春、ドラッグ密売が、主な資金源となっています。
ところがコロナのために、家族間の連絡が以前よりも増えたため高齢者への詐欺ができなくなり、密をさけるために売春などもできなくなりました。
【コロナになってからの資金源】
そこで急激に増えたのが、麻薬の密売なのです。
特に10代や20代の若者をまず麻薬の乱用者に仕立てあげ、麻薬の購入資金を手に入れるために売人に仕立てる構造を作り上げたのです。
外出がままならず自宅にいる若者が、興味本位でネットを使って手軽に麻薬に手に入れ、それを仲間達にも勧め、乱用者が増えて売人も増えるということが、コロナのために急速に広まっているという悪循環を生み出しています。
他方大人はコロナへの対策に追われ、若者のこの麻薬問題に乗り出すだけの体制を整えられずにいます。
この点からも、大麻も確実に暴力団の資金源になっていると言えるでしょう。
大麻が日本で違法な理由― その他の理由―

日本で大麻が違法な理由として、このような見解を述べている人もいます。
大麻は人をリラックスさせる効果があるため、解禁したら労働威力が削がれて、日本の経済に影響を与えかねないからだと。
【ヒロポンが合法だった時代】
昔日本でも覚せい剤が「ヒロポン」と呼ばれ、合法だった時代がありました。
覚せい剤の効果として、眠気を吹き飛ばし、集中力を増加させることはよく知られています。これは大麻とは正反対の効果ですね。
一説によると、第二次世界大戦中、特攻隊隊員は飛び立つ前にヒロポンで恐怖心を排除していたという話があります。
【大麻で働かなくなる?】
大麻で働かなくなるという理由の真偽は定かではありません。
もし大麻を合法としたら国民が働かなくなることを恐れて、国が大麻を合法化しないのだとすれば、机上の空論ではなく、確たる科学的証明をもって、その事実を国民に開示するべきだと思います。
大麻が日本で違法な理由は?【前編】考えられる理由を徹底検証!まとめ

以上のとおり、大麻が日本で違法な理由について、考えられる事情を検証してみました。
確かに様々な事情から、日本で大麻が違法なことには理由があることが分かりました。
他方、「医療大麻」の問題や、海外では合法化されている国があるのも事実です。
そこで後編では、日本における大麻の歴史の観点や海外事情及びそれに派生する産業化との対比から、なぜ日本で大麻が違法な理由を更に探っていきたいと思います。
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