
うつ病の要因が仕事であるのなら今の会社を辞めるしかないのでしょうか。
いいえ、会社を「続ける」・「辞める」はあなた自身が選択し決めていいのです。
人にはそれぞれ背景があります。
あなたにとって最良の選択ができるかどうかが重要なのです。この記事がそんなあなたの手助けとなれば幸いです。
目次
うつ病とは

うつ病は気分障害のひとつです。
気分障害とはいえど、精神的な症状だけではなく身体的な症状が現れることのある病気です。
- 今まで好きだったことや楽しんでやれていたことにも気力が湧かない
- 友人や家族と話すのも面倒で話していてもつまらない
- 身だしなみやおしゃれに関心がわかない
- 不安や焦燥感でじっとしていられない
- 毎日の生活に充実感がない
こういった症状が継続して2週間以上ある場合や、それによって日常生活に支障が出ている場合はうつ病の可能性があります。
うつ病の原因

仕事によるうつ病とはどんな原因があるのでしょうか。
一般的に多いとされる原因を3つ紹介します。
- 業務量や内容が原因
仕事の量が多かったり、仕事内容を苦痛に感じてうつ病に発展するケースがあります。
- 仕事の責任が原因
責任感が強く仕事の重圧がプレッシャーとなりうつ病になることがあります。
- 対人関係が原因
上司・同僚・後輩とのコミュニケーションがうまくいかずうつ病になることも。
会社を休職するという選択

過度なストレスにより冷静な判断ができない可能性もあります。
会社を続ける・辞めるの判断をする前に一旦休職という選択肢もあります。
結論を急がず家族・友人、医師に相談したうえで決めましょう。
休職する
お勤めの会社に休職制度があればそれを利用するのも手です。
うつ病の症状が軽くなり復職を考えた時に、新しい環境下で働くよりもいままで働いていた慣れた環境へ復職することがあなたにとって負担が少ないと感じるのであれば休職をおすすめします。
ただし休職期間中の欠勤部分は通常欠勤として考慮され有給休暇が付与されない可能性が高く金銭的なデメリットがあります。
休職する場合に知っておきたい制度
疾患や怪我で仕事を長期間休むときに無収入になってしまうことを避け、生活を保障する目的で支給される手当金のことです。 保険組合の加入期間によってその人の平均収入額の3分の2の額、または月額28~30万円のいずれかが最長1年6ヶ月まで支給されます。 詳細はこちらをご確認ください。
仕事を続けていい?

うつ病は症状に程度があり症状が重くなければ、治療を受けながら仕事を続けることも可能です。
ただしあなた自身は「もう少し頑張れるはず」と思っていても休養が必要な場合もあります。
必ず無理はせずに医師と相談しながら少しずつすすめていきましょうね。
仕事を続けるという選択
うつ病の治療と仕事を両立するのは簡単なことではありません。
ただうつ病は環境の変化に影響されることが多いので「慣れた環境で働ける」「生活のリズムが狂わない」など心身の負担が少ないことも事実です。
またうつ病の治療は長引くことが多いのでどうしても金銭的な問題がつきまといます。仕事を続けて安定した給料をもらうということが安心材料の1つとなるのではないでしょうか。
人間関係や責任の重圧がつらいけど今の仕事が好きだから続けたいという人も多いでしょう。
では今の会社を辞めずに、うつ病と上手につきあっていくにはどうすればいいでしょうか。
上司や産業医に相談
うつ病の治療をしながら働く場合、まず上司や会社の産業医に相談しましょう。
今のストレス要因である職場環境を調整してもらう必要があります。
できればうつ病のことは周りに知られたくないという想いもあるかもしれませんが、周りの理解・支えがなければ両立は難しいものです。
仕事を続けるための環境づくり

仕事とうつ病治療の両立のためには、会社をあなたにとって働きやすい職場環境にすることが大事です。
いまはうつ病という病気も広く認知されてきているので、協力的な会社であればあなたが働きやすい環境作りの手助けをしてくれるはずです。
職場の同僚に認知・理解してもらう
調子の悪い時は同僚にフォローしてもらいましょう。
病気のことを知っていてくれるというだけで安心感につながります。
可能であれば「どういうときにどのような症状が起こりやすい」のかまで伝えられれば相手もフォローしやすいと思います。
配置転換を申請・相談する
会社に「配置転換」を申請・相談してみましょう。
うつ病の原因が職場環境への不適応などの場合は、配置転換や異動で症状が軽くなる場合もあります。
短時間勤務制度などを利用する
会社に適用が可能な短時間勤務制度があれば活用しましょう。
残念ながら現日本では病気を理由とした短時間勤務制度は法律で規定されてはいませんが、会社によっては適用ができるところもあります。
人事部・産業医とも話し合い無理せず働ける職場環境を整えてくださいね。
きつかったら休めるようにする
うつ病になる人は過剰に責任感が強く無理をしてでも出社するという人が多いです。
そこでおすすめなのは最初に自分の上限値を上司と話し合っておき、その上限を超えたら休むと決めておくのです。
「1日50件まで」という業務量でもいいですし「吐き気がしたら」など症状の上限設定でもいいと思います。
あらかじめ決めておけば「休みます」と言い出しやすいですし上司からも休みの提案がしやすいです。
仕事を続けるために意識すること
次はあなたの意識を変えてなるだけ日々のストレスを軽減するよう調整してみましょう。
考え方ひとつで人生は変わります。
「今」に集中しよう
例えば会社まで歩いて通勤するとき「会社についたらあれをやってこれをやって…」「今日は失敗しないだろうか」など道中いろいろな不安に襲われると思います。
これを無理に「大丈夫!」「前向きに」なんて思えるわけありませんよね。
なのでこういう時は、ただ歩くことにのみ集中するよう意識してみてください。
その作業にひたすら取り組むと「作業興奮」というホルモンが脳内に分泌され、不安などの感情が徐々に軽くなるそうです。
自分の症状を把握する
例えば「夕方になると特に落ち込みが激しくなる」のなら「仕事はなるだけ午前のうちに終わらせる」「嫌な仕事ほど午後に持ち込まない」などの対応をしましょう。
これをするためには自分の症状やそれが出る時間帯を把握する必要があります。
自分の症状を把握するって意外と難しいですよね。
定期的に医師・産業医に「こんなことがあってすごく落ち込みました」と相談にいくことで「あーこういう時に私はこうなるのかー」と自分の症状を客観的に見れるようになるのではないかと思います。
原因を考えすぎない
「何が自分をこうさせてしまったのか」とあまり深く考える必要はありません。
うつ病はストレス要因と離れたからといって症状が改善する病気ではないのです。
たとえばうつ病になった原因が上司のパワハラだったとしても、その上司の転勤で症状が完全に治るわけではないということです。
たしかにストレス因を取り除くことは大事ですが、それ以上に自分の症状とどう向き合っていくかがうつ病を治すうえでは大切なことのように感じます。
仕事を続けるために行動を見直す
最後に行動の改善でうつ病の症状軽減につながる方法をご紹介します。
うつ病は完治するまでに時間のかかる病気なので、無理に早く治そうと焦らずに上手につきあっていことが重要なのです。
すぐに行動する
なにも考えずにとにかく早めにスタートをきりましょう。
うつ病には調子のいい時・悪い時と波があります。
そのため自分の思うように事が運ばずいらいらしたり仕事に支障がでることもあるでしょう。
そうならないよう思い立ったらすぐ行動します。
あれこれ考え不安を感じる前にとにかく動いてみましょう。
良質な睡眠をとる
早寝早起きを心がけましょう。
小学校の先生のようなことを言いましたが、うつ病と不眠は切っても切り離せない関係なのです。
不眠が1年間以上続いている場合はうつ病になる危険性が40倍になるという報告もあります。
睡眠リズムの乱れは心のバランスの乱れといっても過言ではないと思います。
軽い運動をする
ヨガや軽いウォーキングを無理せずに続けましょう。
「うつ病」には軽い運動が有効です。
必要以上に運動をすると疲労してしまい却ってよくないので20~30分程適度に運動しましょう。
朝の通勤時に朝日を浴びて好きな音楽を聴きながら、何も考えずに歩くのがおすすめですよ。
リラックスする
いろいろ対策を講じても不安は突如としてやってきます。
そういったときは「深呼吸をする」など自分でルーティンを決めてしまうのです。
そうすれば不安に襲われたときにこれをすれば大丈夫という安心感にもつながります。
- 深呼吸をする
- 軽いストレッチ、伸びをする
- 周囲を散歩する
- 目をつむる
さらにおすすめの「丹田呼吸」という呼吸法をご紹介します。
緊張をほぐす方法#丹田呼吸法
イスに座って体全体をリラックスさせる。
膝と膝は肩幅に開き、足の裏を床につける。
両手を丹田に軽くあてる。ポイント:丹田意識して呼吸する
息を吐くときは、吸うときの2倍 の時間が理想 pic.twitter.com/idaoH5W8ow— バスケ部の味方 (@occhan1008) May 31, 2014
おへそより指3、4本分下にあるツボ「丹田」を意識した昔からある呼吸法です。
仕事を辞めるべき?

うつ病は完治が難しく長期にわたる治療が必要な病気です。
そのためストレスの原因である仕事を辞め、休むことに専念するというのも選択肢の一つです。
仕事を辞めることは決して甘えではありません。
ただ辞めて後悔することがないよう心身ともに健康な状態の時に決断するようにしましょう。
仕事を辞めるという選択
昔に比べるとうつ病の認知度があがり理解を得やすい環境になったとはいえ、残念ながらまだまだすべての会社の支援体制が整っているとはいえません。
こんな会社はもう嫌だという人もいれば、できれば仕事を続けたいが会社を辞めざるを得ないという人もいるのではないでしょうか。
「辞める」という選択は「甘え」でも「逃げ」でもなくむしろ「挑戦」だと私は思っています。
現状を打破し歩き出すための行動です。
では仕事を辞めると決断したら、どのように対応すればいいでしょうか。
退職前にすること
退職の前にしておいたほうがいい申請や手続きを紹介します。
- 労災保険の申請をする
うつ病の原因が職場にあると明確に判断される場合は「労働災害保険」の申請をしましょう。
労働災害(労働によって生じる怪我や疾病)と認定されれば治療費などの補償を受けることが可能です。
しかし一般的には、うつ病による労災認定は難しいといわれています。
精神障害の労災認定要件
①認定基準の対象となる精神障害は発病していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷や固体側要因により発病したとは認められないこと
引用文:厚生労働省 精神障害の労災認定
- 離職票の交付を依頼する
会社に「離職票」の交付を依頼します。
雇用保険の失業給付(基本手当)を受給する際に必要な書類です。
辞表提出

退職時に辞表を提出するという人もいるでしょうが、退職届に退職理由の詳細を記載する必要はありません。
うつ病による退職事由は「自己都合」や「療養に専念するため」と記載する人が多いようです。
ハラスメントなど会社側に原因があるときには「会社都合」とするのが一般的です。
退職後の手続き
ここでは会社を退職後に行うべき手続きをご紹介します。
- 健康保険の切り替え
会社の健康保険に加入している人は以下のいずれかに切り替えが必要です。
- 国民健康保険に加入する
- 勤め先の健康保険を任意継続する
- 家族の扶養に入る
- 失業給付の受給手続きをする
ハローワークにて失業手当の手続きをしましょう。
失業給付はあくまでも求職中の人に支給される手当です。
うつ病などの疾病によって求職活動ができない場合は、一定の条件のもとで受給期間を延長することができます。
退職時に利用可能な支援制度
うつ病は長期にわたる治療が必要となるため各支援をうまく利用していきましょう。
自立支援医療制度(精神通院医療制度)
精神疾患の治療のために通院中の人や、再発の予防目的で通院中の人の医療費の自己負担額を軽減する制度です。
疾患の種類や所得に応じて1ヶ月当たりの負担の限度額が設定されます。
詳細は、厚生労働省の自立支援医療制度の概要をご覧ください。
自立支援医療制度の概要 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
精神障害者保健福祉手帳
うつ病など精神疾患にかかっている患者さんが一定の障害の状態にあることを証明するものです。
手帳を持つ人は社会におけるさまざまなサポートを受けることが可能となります。
医師の診断書などにもとづいて審査が行われ障害等級1~3級が決定されます。
- 1級 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 2級 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 3級 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
障害年金
障害や疾患のために、生活や仕事に支障が出たときに支給される年金です。
働いていた場合でも、症状により仕事が制限されていると判断された場合は、生活の一部を支援する額が支給されます。
生活保護
怪我や疾患などにより働くことが難しく、収入が不十分で生活に困った場合に健康で文化的な最低限度の生活を保障するための費用が給付される制度です。
受給には各種条件がありますので、お住まいの市区町村にご相談ください。
転職を支援する機関

医者の指導のもと職場復帰が可能となった場合、復職を支援してくれる専門機関があります。
ハローワーク
ハローワークの「専門援助部門」を利用しましょう。
また、就職に関する相談やカウンセリングの実施のほか、障害や疾患のある人を対象にした求人の紹介などをおこなっています。
就労移行支援事業所
一般企業への就労を目指す障害や疾患のある人の求職から就職までの一連の過程をサポートする事業所です。
職業訓練・面接・履歴書対策などの就職活動のサポート、就職後の定着支援などを受けることができます。
転職先への報告義務
結果からいうと転職先に「うつで退職した」と理由を伝える義務はありません。
しかし面接時にそのような内容の質問があれば正直に述べた方がよいでしょう。
うつになった明確な原因が職場にあるなどの場合には「前向きな働きかけをしたにも関わらず改善されなかったため、転職を念頭に置いて退職をした」という説得力のある説明ができることもあります。
その他支援機関の活用

精神科等の病院・産業医などといった機関以外にも、うつ病の人を支援する機関はさまざまあります。
精神保健福祉センター
うつ病を含む精神疾患を抱える人のサポートを目的に各都道府県に設置された支援機関です。
他の支援機関と比較して精神疾患に特化している点が特長です。
匿名でも相談を受け付けているそうなので、まずは電話にて気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
地域障害者職業センター
うつ病に限らず障害を抱える一人ひとりのニーズに応じて「職業評価・職業指導・職業訓練」などの専門的な職業リハビリテーションサービスを提供しています。
仕事に関する悩みが大きいという方が利用しやすい施設です。
障害者就業・生活支援センター
就業の支援が必要な障害のある人に対し、相談や職場・家庭訪問などを実施しています。
仕事に限らず生活面での支障も大きいと感じている方におすすめです。
労働基準監督署
労働基準法などの労働関係に関する法令を守らない企業を取り締まるための機関です。労働者からの相談にどの労働基準法等に違反している可能性があるのか、解決方法や手続きのアドバイスを行います。
一般社団法人日本うつ病リワーク協会
うつ病等により休職する方の職場への復職支援を行う集まりです。
うつ病の原因は仕事のストレス。会社を続ける?辞める?最良の選択とは/まとめ

いかがでしたでしょうか。
- うつ病とは
- うつ病の原因
- 会社を休職という選択
- 仕事は続けていい?
- 仕事は辞めるべき?
- 転職支援をする機関のご紹介
- 一人で悩まないで。いろいろな支援機関のご紹介
仕事を続けるのか、辞めるのか今後の人生に関わる大きな分かれ道です。
決して無理はせずに自分のこころとからだに相談しながらゆっくり決めていきましょう。
願わくばすべての会社が「全力でフォローしていきますよ」という体勢であればいいのですが、なかなか難しいですよね。
この転機に静かなところへ移住したいと考えている人もいるのではないでしょうか?こちらはそんな人にぜひ読んでほしい記事です。