
2020年も終わりに近づいてきました。
年末といえば会社勤めをされている方なら毎年必ず起こるイベントがあります。
そう【年末調整】です。
年末調整は書き方が難しいと思っている方が多いのではないでしょうか?
また2020年度より改正された事項もあり、記入方法が変わったとも聞きます。
今回は2020年の【年末調整】の変更点や書き方について見ていこうと思います。
目次
年末調整とは?

この記事では【年末調整】の書き方について触れようと思うのですが、そもそも何をする事なのかわからない・わからずに提出していた、という方も居るのではないでしょうか?
なのでまずは年末調整とは何をすることなのか知ることから始めましょう。
引用:https://www.freee.co.jp/hr/yearend/knowledge-flow/
以上が【年末調整】の説明となりますが、更に噛み砕くなら「ざっくり所得税を計算していたけど全部の金額が出たから再計算しますね。再計算して足りなかった分は後から貰い、貰いすぎてたらその分は返します」ということです。
過不足が発生する理由
どうして「過不足金額」が発生するのでしょうか?
それは、毎月徴収していた金額は概算であり12月の年末調整をする事でようやく金額が確定するというのが大きな理由の一つです。
その他に、進退や転職による給与金額の変動や家族構成の変更、給与と賞与の控除意外で社会保険やその他保険料を支払っている様な場合も「過不足金額」の発生理由です。
2020年の変更点

冒頭でも触れましたが、【年末調整】の書き方に入る前に2020年は書き方にどの様な変更があったのか見ていきましょう。
給与所得控除に関する改正
給与の収入金額(X) | 給与所得控除額 | ||
---|---|---|---|
改正後 | 改正前 | ||
162万円以下 | 55万円 | 65万円 | |
162万円超 | 180万円以下 | (X)×40%-10万円 | (X)×40% |
180万円超 | 360万円以下 | (X)×30%+8万円 | (X)×30%+18万円 |
360万円超 | 660万円以下 | (X)×20%+44万円 | (X)×20%+54万円 |
660万円超 | 850万円以下 | (X)×10%+110万円 | (X)×10%+120万円 |
850万円超 | 1,000万円以下 | 195万円 | |
1,000万円超 | 220万円 |
引用:https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index/01.htm#a002
給与所得控除とは、給与所得者に適用される控除で、所得税の計算前に年収から引かれるものです。この控除される金額が2020年より10万円に変更されています。
合わせて控除上限も2020年より変更され、年収が850万円以上の場合に限りますが、改正前は220万円だったのが195万円と25万円も引き下げられます。
基礎控除と所得金額調整控除に関する改正と創設
「給与所得者の基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」の創設
下記①及び②の改正に伴い、それぞれ給与所得者の基礎控除申告書と所得金額調整控除申告書が新しく創設され、年末調整における基礎控除ならびに子共と特別障害者等が親族にいる者等の所得金額調整控除を受けようとする給与受給者は、その年の12月の給与の支給を受ける日の前日までにそれぞれの申告書を会社に提出しなければならない
引用:https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index/01.htm#a002
それではそれぞれ内容を見ていきましょう。
①基礎控除金額の改正
所得金額 | 基礎控除 | ||
---|---|---|---|
改正後 | 改正前 | ||
2400万円以下 | 48万円 | 38万円 (所得制限なし) |
|
2400万円超 | 2,450万円以下 | 32万円 | |
2450万円超 | 2,500万円以下 | 16万円 |
引用:https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index/01.htm#a002
基礎控除とは所得税を収める人全員が対象で、これまでは控除額が一定で、2020年から所得金額別に最大48万円に引き上げがありました。
所得控除は10万円引き下げられたのですが、基礎控除も10万円引き上がったので±0と言えます。
②子供や特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の創設
その年の給与の収入金額が850万円を超える給与受給者で、下記の内容に該当する場合に、その給与の合計額から850万円を引き、控除後の金額から給与所得合計の約10%を控除する
- 給与受給者本人が特別障害者である
- 同一生計配偶者が特別障害者である
- 扶養親族が特別障害者である
- 扶養親族が年齢23歳未満(平成10年1月2日以後生)
引用:https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index/01.htm#a002
上記の控除と、給与所得と年金所得の両方を受給する人に対する所得金額調整控除もありますが、年末調整では所得金額調整控除の適用を受け取ることは出来ません。
ですが、確定申告で所得金額調整控除の適用を受けようとする受給者は、年末調整で給与所得者の基礎控除申告書の合計金額を計算するには、所得金額調整控除を加味して合計所得金額を計算しなくてなりません。
扶養親族等の金額要件の改正
生計を同じにする配偶者や、扶養親族など区分事の合計金額所得要件が10万円に引き上げられました。
扶養親族の区分 | 合計所得金額要件 | |
---|---|---|
改正後 | 改正前 | |
同一生計配偶者 | 48万円以下 | 38万円以下 |
扶養親族 | 48万円以下 | 38万円以下 |
源泉控除対象配偶者 | 95万円以下 | 85万円以下 |
配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 48万円超133万円以下 | 38万円超123万円以下 |
勤労学生 | 75万円以下 | 65万円以下 |
引用:https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index/01.htm#a002
上記の他に、在宅労働者等の事業収入の所得計算について、必要経費に参入する金額の最低保証額が55万円に引き下げられています。
年末調整の書き方

それではいよいよ2020年の【年末調整】の書き方を見ていきましょう。
記入する用紙は3枚
2020年から年末調整で記入する申告書は全部で3枚となりました。
①令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除 申告書
②令和2年分 給与所得者の保険料控除 申告書
③令和3年分 給与所得者の扶養控除 申告書
の計3枚になります。
少し難しい言葉が並んで、書き方も難しそうと思われる方もいるかも知れませんが、一つ一つ見ていけば難しいと思うこともなくなると思いますのでぜひ参考にしてみてください。
①令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

引用:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/1289090.html
こちらの用紙でポイントなるのは
- 自分の所得と基礎控除
- 配偶者の情報と所得
- 配偶者控除
と、ここは漏れのないようにきんにゅうしまs
1「自分の所得と基礎控除」
「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」の欄に、本年中の給与支給額を給与所得の収入金額欄に記入します。
その金額を裏面の給与所得の計算方法で計算し、その所得金額を記載します。
区分Ⅰに当てはまるものを判定欄のA・B・Cから記入します。
2「給与所得者の配偶者控除等 申告書」
ここには配偶者がいる場合、配偶者の収入金額を上記と同じように計算し記入します。
そして1〜4の数字を区分Ⅱに記載し、ⅠとⅡに記載した数字を基に、配偶者控除・配偶者特別控除の額を一覧表から該当するものを記載します。
区分Ⅱに記載した数字が(1)または(2)の場合は配偶者控除の欄に、(3)〜(4)の場合は配偶者特別控除の欄に該当する数字を記載します。
3「所得金額調整控除 申告書」
受給金額が850万円を超え、かつ扶養親族が特別障害者である事、または23歳未満に該当する場合は要件欄の該当する項目にチェックを入れます。
それぞれ要件欄の指示に従って扶養親族等の欄に該当の扶養親族等に関する項目と、特別障害者の欄に交付済みの手帳の種類や障害の内容などを記載します。
②令和2年分 給与所得者の保険料控除申告書

引用:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/1289090.html
次に「給与所得者の保険料控除申告書」の記入方法です。
1生命保険料控除
生命保険料控除の欄には、2020年中に払った生命保険料、介護保険料、個人年金保険料に関する事項をそれぞれ記載します。
保険料控除証明書が各保険会社から送られて来ますので、それを基に内容を記載します。
2地震保険料控除
こちらも上記と同じく本年中に払った地震保険の金額を記載します。
注意点としては、一緒に支払っている火災保険料は控除の対象とはなりません。
3社会保険料控除
こちらも2020年中に支払った本人と、その本人と生計を同じにする親族分の金額を記載します。記入する保険料の内容は以下の通りです。
- 国民健康保険の保険料や国民保険税
- 健康保険・厚生年金保険・船員保険の保険料
- 介護保険法の規定による介護保険の保険料
- 国民年金の保険料や国民年基金の加入員として負担する掛金
- 農業年金の保険料や雇用保険の労働保険料など
4小規模企業共済等掛金控除
こちらは2020年に支払った小規模企業共済と確定拠出年金の掛金の金額を記入します。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合は個人型の欄に記載します。
③令和3年分 給与所得者の扶養控除(異動)申告書

引用:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/1289090.html
最後は令和3年分の給与所得者の扶養控除等申告書になります。
こちらの申告書は翌年1月の給与から引かれる所得税の金額を決定する申告書となるのですが、扶養家族などの記入漏れがあると毎月の所得税が増えてしまいかねないので注意が必要です。
1氏名・個人番号・生年月日等
給与受給者本人の名前と誕生日、世帯主名とその続柄、配偶者の有無をそれぞれ記載します。
個人番号(マイナンバー)に関しては省略する会社もありますので自分の所属する会社に確認します。
2源泉控除対象配偶者
源泉控除対象配偶者欄には下記の要件を満たしている場合のみ記入します。
- 配偶者が青色・白色事業専従者でないこと
- その配偶者の合計所得金額が95万円以下であること
- 給与所得者と生計を同じくする配偶者で、翌年の合計所得金額の概算が95万円以下
こちらに該当する場合は記載します。
3控除対象扶養親族(16歳以上)

扶養親族の年齢と控除額 引用:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/1289090.html
控除対象扶養親族(16歳以上)の欄には下記の親族がいる場合に記載します。
- 16歳以上の親族である
- 上記の親族が給与受給者と同じ生計である
- 上記の親族の年間の合計金額が48万円以下である
以上が対象の親族となりますが、19〜23歳未満の親族を特定扶養家族といい、70歳以上の親族を老人扶養家族といい、対象が親族にいる場合はレ点を記入する欄がありますので忘れずにチェックを入れます。
また仕送りをしている同居していない扶養親族がいる場合には、生計を一緒にする事実として実際に1年間に仕送りした金額を記入しなくてはなりません。
4障害者・寡婦・ひとり親または勤労学生
こちらの欄には対象の本人が障害者である場合や、寡婦・ひとり親や学校等に通いながら働いている場合に記入します。
- 障害者:身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載のある一定の障害者が対象になります。
- 寡婦:合計所得の金額が500万円以下で夫と死別・離婚した後に再婚をしていない人になります。
- ひとり親:合計所得の金額が500万円以下で、今は結婚しておらず同じ生計の子供がいる人になります。
- 勤労学生:合計収入の金額が75万円以下で大学などの学生や一定の要件を備えた専修学校の生徒になります。

全体記入例 引用:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/1289090.html
5他の受給者が控除対象の扶養親族等
こちらは夫婦で共働きだったり、家族を扶養に入れようとする人が申告書を提出する人以外の場合に記載します。
例えば控除対象の親族がいる共働き夫婦の場合、夫側が扶養控除を受ける場合に妻側はこの欄に夫と子供の情報を記入します。
6 16歳未満の扶養親族
こちらには扶養親族に16歳未満の家族がいる場合に記入します。
以上で2020年の【年末調整】に関する申告書の記入は終了となります。
この他に年末調整の書き方について不明点・疑問点がありましたら国税庁のHPも合わせて御覧ください。
HPはこちら➡︎国税庁 源泉徴収義務者の方
【年末調整】2020年度の書き方は難しい?変更点と記入方法を知ろう!まとめ

以上が2020年度の【年末調整】の書き方と変更点なりますが、一つずつ見ていくと難しいと感じていた部分も意外と書けそうに思えるのではないでしょうか?
給与所得者である以上年末調整は義務と言っても過言ではありませんので、この機会に少しでも関心を持ち来年以降の年末調整もスラスラ書けるように書き方を身に着けましょう。
年末調整でも必ず使用するハンコですが、政府が「脱ハンコ」を推進する取り組みをおこなっているのはご存知でしょうか?
こちらの記事では「脱ハンコ」の影響などについて記載されていますので合わせてご覧ください。